「自分たちの努力で問題を解決せず、どこからか超人なり聖者なりが現れて、彼らの苦労を全部ひとりでしょいこんでくれるのを待っていたんだ。そこをルドルフにつけこまれた。いいか、おぼえておくんだ。独裁者は出現させる側により多くの責任がある。積極的に支持しなくても、黙って見ていれば同罪だ。」(第1巻・51頁)

 “なぜ、ルドルフが権力を手に入れることができたか”というテーマの父と子の問答。政治を政治家だけに任せていては、いつか足元をすくわれる。考えてみれば、政治に参加しない(たとえば、選挙に行かない)というのは、結局は奴隷と同じである。決められた事に従ってさえいれば、確かに楽だ。そのかわり、決められた以外の事はできなくなる。人間としての大きな可能性が閉ざされてしまうと言えよう。それだけでなく、ある日突然、自分や家族の生命が脅かされる、という事もありうる。現実をもっと良くするために、政治を自分たちの問題として考えることこそが、本当の「自由」と呼べるのだ。

戻る