前例のない作戦に実績のあるはずがない。実績はこれからの戦闘で示されるのではないか。(第1巻・35頁)
敵に三方から包囲されようとしている危機をラインハルトは各個撃破の好機と捉えた。その作戦をシュターデンが前例がないという理由で撤回を求めたときの台詞。
政治とは過程や制度ではなく結果だ、とラインハルトは思う。(第1巻・239頁)
専制国家に生きる人間ならではの発想である。結果として人類の進歩に寄与するのであれば、不当な手段で権力を奪い取っても、民衆の自由をうばう制度を作ってもよいと言うわけだ。だが、それが確実に人類の進歩につながるという保証は、どこにもない。
遺伝など信用できるものではない。(第1巻・240頁)
ある要素や能力、例えば頭の良し悪しは遺伝的に決まるものなのか?と言った問いに答えるためには、それが遺伝情報に含まれるか否かを調べるのが最もよい方法だと思われる。ヒトゲノムの解明によってそれが可能になると思うが、コピーを作る際にエラー(突然変異)が発生する確率がゼロでない以上、絶対ではない。
「体制に対する民衆の信頼をえるには、ふたつのものがあればよい。公平な裁判と、同じく公平な税制度。ただそれだけだ」(第3巻・47頁)
なんと簡明な定義であろうか。思わず、本当にそうなのかどうか、検証してみたくなる。もっとも、公平さ、公正さを証明することなど事実上不可能だから、為政者にとっては、公平だ、公正だと民衆に思わせることが肝要である。不公平、不公正が白日の下に晒されれば、民衆は彼を支持しない。完全に公平、公正ではないにしても、取り立てて騒ぎ立てるほどでもない。その分水界を見極めることが、専制国家の為政者に必要な資質であろう。
武人には武人らしく、商人には商人らしく、悪党には悪党らしく接するべきであろう。(第4巻・37頁)
皇帝誘拐事件が起きる前、ボルテックとの交渉に臨むラインハルト。どんな相手でも同じように接するのと、どちらがより実際的か。容易に結論は出ないように思う。
「一流の戯曲が一流の劇として完成を見るには、一流の俳優が必要だそうだが、卿の演技はいささか見え透いていて興をそぐな」(第4巻・39頁)
皇帝誘拐に関して、ボルテックと交渉中のラインハルトの台詞。もはやフェザーンがこの一件に絡んでいることが明白であるのに、それを意図的に表には出さないボルテックに向かって放ったこの台詞である。
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