生きていればこそ復讐戦を企図することもできようものを。(第1巻・215頁)

 ヤンの計略によってイゼルローンを失った帝国軍艦隊の中、脱出用シャトルに乗ったオーベルシュタインの内心の台詞。捲土重来という発想が艦隊司令官のゼークトにはなかったのだろう。これしかない、選択肢はないと思い込むところから狂気が発生する。

「助からぬものを助けるふりをするのは、偽善であるだけでなく、技術と労力の浪費だ」(第10巻・347頁)

 この場合の「助からぬもの」というのは、オーベルシュタイン自身のこと。オーベルシュタインの価値観や考え方がよく現れた一言といえよう。ある意味辞世の句である。不合理なものを徹底的に排除する。無駄をなくす。とはいっても、あくまでも彼の価値観から言ってのことなので、他の人から見ればまた別である。
 地球教のテロにより致命傷を受けたオーベルシュタイン。自分の死を前にしてこの台詞である。

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