「子供は完全な親を見ながら育ったりするものじゃないさ。むしろ、不完全な親を反面教師にして、子供は自主独立の精神を養うんだ。わかるかね、提督閣下」(第3巻・96〜97頁)

 ヤンとユリアンがキャゼルヌ宅を訪問した際のヤンとキャゼルヌの会話の中の一言。案外そうかもしれない、と思った人も多いのでは?もっとも、完全な親などこの世のどこにも存在しないと思うが・・・。神ならぬ人間の身であるならば、誰でも生きているうちは「発展途上」なのだ。

「(前略)恋愛にかぎらず、人の心のメカニズムは数学じゃとけない。(中略)ひとつのものに対する愛情が、他のものへの愛情も尊敬も失わせてしまう。善悪の問題じゃない。どうしようもなく、そうなってしまうんだ。(中略)お前さんは頭もいい、性格もまずりっぱなものだ。だが、そんなものとかかわりなく、火ってやつは燃えあがるものでね」(第5巻・257頁)

 ヤンがフレデリカにプロポーズした夜、ユリアンはキャゼルヌの私室を訪ねる。いつもと様子が違うことを見てとったキャゼルヌは理由を聞き、酒を勧めて語り出す。ユリアンはフレデリカに恋心を抱いていた。まことに、世の中は万事めでたしとはいかないものだ。

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