所得が増大するにつれて需要が減少する財を下級財inferior goodsという。普通は所得が増えれば需要も増える。そのような財は上級財superior goodsと呼ばれる。(正常財という呼び名は他の意味もあり、問題があるのでここでは使用しない)(註1)ではこの下級財とは一体どのようなものか、下級財たる条件とは何か?

 所得が少なくとも増大しているのであれば、ある財aの需要は減少することはない。減少するためには条件が必要である。その条件とは、減少分を補う代替財bが存在することである。では、経済人Aが代替財bを選ぶ理由は何か。それは二通り。
(1)価格が同じ場合、aよりbの効用が大きい。
(2)効用が同じ場合、aよりbの価格が低い。
 ところがこの理由は両方とも一般的に成り立つものであって、所得の増大いかんは関係ない。下級財たらんとすれば、所得が増大したときのみaの需要が減少し代替財bの需要が増えなければならない。
 所得が小さい状態でbの需要が少ないのは、bを購入するに足る所得がないからである。従ってbとはaよりも価格が高く、効用が大きい財である。

 故に、下級財の条件は下記の通り。
(1)代替財が存在する。
(2)その代替財は価格がより高い。
(3)その代替財は効用がより大きい。




(1)『経済学大辞典T』173頁。







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